尾山台にあるピアノアトリエ Fluss (フルス)さんにて、小説『わたしたちと森の物語』の朗読会 「WINTER STORY HOUR “FOREST AND OUR STORY”」を開催しました。

 Fluss は、ドイツ語で「川、流れ」という意味を持つ、ピアノアトリエで、時間の流れ、人の巡り合わせ、幾重の流れを汲む音楽の工房とも言える場所。冬の朗読会と題された、イベントでは、『わたしたちと森の物語』の小説世界を、読み手の玉澤幸子さん、ピアニストの小松陽子さんが Fluss の空間に描き出してもらいました。

 

 

 表現というものが”自分とはどのような人間なのか”という自己の本質的なところに近ければ近いほど、それが解放された時、表現者はそれを受け取った人々の反応に敏感にならざるを得ません。表現するものが自己の内にある、繊細で、実直の部分でなければ、時の篩いに打ち勝つような他者を揺さぶる表現にはなり得ないと僕は思っています。それ故に表現者は無防備にもそれが晒されることをどこかで覚悟しなければいけません。

 今回の冬の朗読会では、読み手の玉澤幸子さん、ピアニストの小松陽子さんがそれぞれの表現によって自己開示をしているように僕には映りました。特に幸子さんは普段強い自己主張はしない控えめな方ですが、今回のプロジェクトでは自身の Ish(自我)が垣間見えて表現者たる顔を覗くことができました。

 

 

 朗読会ではあくまで僕の書いた小説は原作であり、演者のおふたりが主役だと思って臨みましたが、自身の表現した言葉の連なりを通じて、誰か第三者がその世界に没入し、その自己の一部を解放していく様は、いち表現者としてとても幸福な時間でした。

 作品が自分の手から離れて、演者によって解釈された、異なる表現になっていくということ。人生で稀有な体験をしました。

 

 
 
Photo by Rika Tomimatsu
 
 
 

冬の朗読会 わたしたちと森の物語
開催日時 | 2018年2月24日(土) 開場18:00~ 開始18:30~
会場 | Fluss
住所 | 〒158-0082 東京都世田谷区 等々力2-1-14 原田ビルB1
料金 | 2,000円 (1ドリンク付き)
読み手 | 玉澤幸子
ピアノ | 小松陽子
小説 | 佐々木新

プログラム
『わたしたちと森の物語』
『冬』(未発表書き下ろし短編)

玉澤幸子 Sachiko Tamazawa | 話し手
学生の頃に音楽のイベントなどで朗読をはじめる。
2017年に盛岡市にあるCIYで開催された、佐々木新 小説個展「わたしとあなたの物語」にて朗読をする。
物語を混じりけなく伝えるために空洞のような話し手を心がけている。

小松陽子 Yoko Komatsu | ピアニスト/作曲家
福島県生まれ。
5歳よりピアノを始め、音大、大学院にてクラシックピアノを学ぶ。
卒業後、演奏者として様々なライブやレコーディングに参加する傍ら、作曲活動を始める。
2013年より活動を開始。
コンピレーションアルバムへの参加、ショートフィルム、映像への楽曲提供なども行なっている。
yokokomatsu.com