処女作となる「わたしとあなたの物語」を刊行しました。この作品は、対称的な存在として描かれている『月』と『湖』というふたつの物語と、それらふたつを繋ぐ『わたしとあなたの物語』から構成されています。

『月』の主人公は、平凡な大学生の男の子と、彼の顔が月に見えるという少し変わった女の子。あるきっかけで二人暮しを始めた彼らが、日常に起こる出来事を通じて、様々な発見をして成長していきます。そして、『湖』では、子どもたちしかいない湖畔でひっそりと暮らす老年の女性が主人公。どちらの物語も“揺れ続ける「わたし」という自我が、周囲の「あなた」と、どのような関わりによって形成されていくのか”というテーマで描いています。

 

あなたの顔は月に見えるの、いろんな月の形に変化して、ときにはとても穏やかな満月に、ときには荒々しい力が漲っている三日月に、 ときには眩い陽光の中にあるうっすらとした幽霊のような儚く薄い月に見えるの、と彼女は半ば眠りに落ちながら述べた。
(『月』より抜粋)

私は人の顔をよく盗み見るのですが、真正面から覗き込む時は目がかちあってしまう恐れがあるので少し大胆にならなければいけません。そして、そのタイミングを間違えて、ふいに相手の瞳とぶつかった時、火を吹いたように私の顔は赤面してしまいます。なぜ、瞳というものはこのように人を動揺させてしまうのでしょうか。きっと、瞳を通じて相手の心を覗き込んだような心持ちになりますし、同時に私の心もまた他者へ曝け出してしまうような気がするせいでしょう。瞳はその人間がどのように世界を見ているのか、そうした窓のようなものなのかもしれません。
(『湖』より抜粋)

 


書籍 『わたしとあなたの物語』


発行所 | 有限会社 HITSFAMILY 東京都世田谷区三軒茶屋 1-16-22 #305 〒154-0024 電話 03-3419-6916
デザイン | Takashi Kawada (HITSFAMILY)
イラスト | Sakurako Oidaira (sakurakooidaira.tumblr.com)